「節税になります」の嘘|不動産営業トークを数字で分解する

「節税になります」の嘘|不動産営業トークを数字で分解する

リスク管理 2026.04.02 公開 2026.04.14 更新

この記事でわかること

Q. ワンルーム投資の節税額はいくらですか?
A. 新築RCワンルーム(建物価格2,350万円、耐用年数47年)の場合、年間減価償却費は約50万円。税率30%の人で年間節税額は約15万円にしかなりません。土地は減価償却できないため、都心部物件は土地比率が高くさらに効果が小さくなります。
Q. 損益通算で節税するのは本当にお得ですか?
A. いいえ。損益通算で節税=不動産所得が赤字=実際に損をしている状態です。節税額15万円のために年間数十万円の赤字を出しているケースが大半で、トータルではマイナスです。
Q. 売却時に節税分は取り返されますか?
A. はい。減価償却で帳簿上の取得費が下がるため、売却時の譲渡所得が膨らみます。保有期間中に節税した分が譲渡所得として課税され、トータルでは税負担がほぼ変わらない、むしろ増えるケースもあります。
Q. 本当に節税効果がある不動産投資の条件は?
A. 課税所得が高い人(税率が高い人)、建物比率が高い物件(木造・築古)、耐用年数が短い物件(中古木造は最短4年償却)、出口戦略まで含めたトータル収支がプラスの投資が条件です。新築RCワンルームはこの条件をほぼ満たしません。

「月々わずかの支払いで資産形成できるんだから、いい話じゃないですか。」 久しぶりに会った知人が、投資用ワンルームマンションを新築で買っていた。収支を聴くと手出しが少し、年間でわずか20万円程度だという。

「それ、年間の節税額はいくらですか?」と聞くと、「確定申告で20万円くらい戻ってきた」と嬉しそうに答えた。

年間20万円の赤字を出して、20万円の還付を受けている。 つまり±ゼロ。「節税」ではなく「赤字の補填」をしているだけだ。しかも管理費・修繕積立金・固定資産税を正確に計算すると、実際の赤字はもっと大きい。

さらに問題なのは含み損だ。この知人は数年前に新築で4,000万円台前半で購入していた。「自分で物件を選んだ」と言っていたが、レインズ(不動産流通機構の成約データベース)で同じマンションを調べると、売り出し価格は購入時から 約1割下落 していた。金額にして 数百万円の含み損 だ。

数年間の節税効果は合計100万円に届かない。含み損を差し引くと、 トータルで200〜300万円のマイナス だ。「節税になります」で始まった投資が、実際には数百万円の損失を生んでいる。

不動産営業の「節税になります」は、高収入者——特に医師や歯科医——に向けられる常套句だ。この記事では、その言葉を 具体的な数字 で分解する。


「節税になります」の正体——年間たった15万円

新築RCワンルームマンションで「節税」がどれだけ成立するか、実際に計算してみる。

前提条件:

項目金額
物件価格3,000万円
うち建物価格2,350万円(土地650万円)
構造RC造(法定耐用年数47年。耐用年数省令 別表第一)
年間減価償却費約50万円(2,350万÷47年)

節税額の計算:

課税所得税率(所得税+住民税)年間節税額
900万円33%約16.5万円
1,800万円43%約21.5万円
4,000万円55%約27.5万円

課税所得900万円(年収1,200万円程度)の人で、年間節税額はわずか16.5万円。 月に直すと約1,400円。これが「節税になります」の正体だ。

しかも土地は減価償却できない。都心部の物件は土地比率が高い(物件価格の30〜50%)ため、建物部分の減価償却費はさらに小さくなる。


損益通算の罠——「節税できている」=「損をしている」

営業マンは「確定申告で○万円戻ってきますよ」と言う。これは嘘ではない。だが、その仕組みを分解すると見え方が変わる。

損益通算の構造:(所得税法第69条に基づき、不動産所得の赤字を給与所得と相殺)

給与所得 1,200万円
不動産所得 −50万円(赤字)
─────────────
課税所得 1,150万円 → 所得税・住民税が減る

確かに税金は減る。しかし不動産所得が赤字 ということは、 家賃収入よりもローン返済+経費のほうが多い ということだ。

項目年間
家賃収入108万円(月9万円)
ローン返済−120万円
管理費・修繕積立金−24万円
固定資産税−8万円
その他経費−6万円
実質キャッシュフロー−50万円

年間50万円の赤字を出して、15〜20万円の税金が戻ってくる。 差し引き30〜35万円の損失だ。これを「節税」と呼ぶのは無理がある。

「確定申告で戻ってくる」という言葉の裏には、「それ以上のキャッシュが出ていっている」という事実が隠れている。


営業トーク6パターンの分解

不動産営業が使うトークには決まったパターンがある。それぞれを数字で検証する。

営業トーク実態
「節税対策になります」年間節税額は15〜25万円。その何倍もの赤字が前提
「将来的に値上がりします」新築プレミアムは購入直後に10〜20%消失。築年数とともに下落が一般的
「自己資金ゼロで始められます」フルローンは金利負担が大きく、月々のキャッシュフローが赤字になりやすい
「家賃保証があるから安心」サブリース賃料は減額される。最高裁でも認められている
「年金代わりになります」ローン完済は30〜35年後。その頃の築古物件は修繕費増・空室リスク増
「生命保険代わりです」団信の保障額は残債に連動して減少。物件価値も下落。純粋な生命保険のほうが合理的

これらのトークに共通するのは、都合の良い前提だけで計算していること。空室率0%、金利変動なし、修繕費なし、売却時の税金なし——そんな投資は存在しない。


売却時に「節税分」を取り返される仕組み

減価償却による節税には、見落とされがちな「出口の罠」がある。

減価償却と売却時の課税:

購入価格: 3,000万円
10年間の減価償却費: 500万円
帳簿上の取得費: 2,500万円(3,000万−500万)

売却価格: 2,800万円(10年後)
譲渡所得: 300万円(2,800万−2,500万)

長期譲渡税率: 20.315%(租税特別措置法第31条)
譲渡税: 約61万円

10年間で減価償却により150万円(税率30%×500万円)を「節税」したつもりが、売却時に61万円を課税される。実質的な節税効果は89万円(年間9万円)に縮小する。

さらに、物件価格が購入時より下がっていれば(築10年なら下がっているのが普通)、キャピタルロスと合わせるとトータルでマイナスになるケースが多い。


本当に節税効果がある投資の条件

すべての不動産投資の節税が嘘というわけではない。効果が出る条件がある。

条件理由
課税所得が高い税率が高いほど減価償却の節税効果が大きい
建物比率が高い土地は償却できない。建物比率70%以上が望ましい
耐用年数が短い中古木造は最短4年で全額償却できる
出口まで含めてプラス売却時の譲渡税を差し引いてもトータル黒字

新築RCワンルームはこの条件をほぼ満たさない。 耐用年数47年(年間償却が小さい)、都心部は土地比率が高い、築浅での売却は新築プレミアム消失で損失が出やすい。

一方、築22年超の木造物件なら4年で全額償却できる(所得税法施行令第129条の簡便法)。同じ建物価格2,350万円でも、年間減価償却費は約588万円(4年償却)と新築RCの約12倍 になる。


節税トークを疑うべき5つのサイン

以下に当てはまる場合、「節税」を理由にした不動産投資は立ち止まるべきだ。

  1. 「節税」だけが売り文句 — 立地・利回り・出口戦略の説明がない
  2. 修繕費・空室率を含むシミュレーションがない — 空室率0%・修繕費ゼロの計算は空想
  3. メリットしか説明しない — リスクに触れない営業は信用できない
  4. 長時間の勧誘、その場での即断を求める — 国民生活センターも注意喚起している手口
  5. 営業マン自身が買っていない — 「いい話」なら自分で買うはず

まとめ

  • 新築RCワンルームの年間節税額はわずか15〜25万円
  • 「節税できている」=「不動産所得が赤字」=実際に損をしている
  • 売却時に減価償却分が課税され、トータルの節税効果はさらに縮小
  • 本当に節税効果がある投資は建物比率が高く、耐用年数が短い物件
  • 「節税になります」だけで投資判断してはいけない。全コストを含む収支計算 が必須

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務上の助言ではありません。税制は法令改正や国税庁の通達等により取扱いが変更される場合があります。具体的な税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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