航空機リースの税制改正まとめ|個人の損益通算制限と法人スキームの今後

航空機リースの税制改正まとめ|個人の損益通算制限と法人スキームの今後

医師・歯科医の節税 2026.02.28 公開 2026.04.12 更新

この記事でわかること

Q. 航空機リースで個人の節税はできますか?
A. 現在、個人が匿名組合型の航空機リースに出資しても、損失は雑所得の扱いとなり、給与所得や事業所得と損益通算できません。2005年の税制改正以降、個人の節税手段としては実質的に機能しなくなっています。
Q. 2005年の税制改正で何が変わりましたか?
A. 匿名組合から分配される損失を、他の所得(給与所得・事業所得など)と損益通算できなくなりました。これにより、個人投資家が航空機リースで節税するスキームは事実上封じられました。
Q. 法人なら航空機リースで節税できますか?
A. 法人は匿名組合からの損失を損金算入できるため、出資初年度に大きな損金を計上できます。ただし、リース期間満了時に利益が発生するため、節税ではなく課税の繰延べです。出口で利益をぶつける対策が必要になります。
Q. 航空機リースと4年償却の違いは何ですか?
A. 最大の違いは3点です。①損益通算:4年償却は個人でも給与所得と通算可能、航空機リースは個人不可。②コントロール性:不動産は売却時期を自分で決められるが、航空機リースはリース期間に縛られる。③税務安定性:不動産の減価償却は税法の根幹で否認リスクが極めて低い。

「ヘリコプターリースを使った節税って知ってますか?」——4年ほど前、知人からそう聞かれたのが、筆者が航空機リースという手法を知ったきっかけでした。その知人は結局、誰もが知る大手企業の会長が所有していた中古ヘリコプターを購入し、共通の知人はそのヘリで東京上空を遊覧したそうです。当時は不動産の仕事を離れていましたが、仕組みを調べてみると、これは利益の繰延べでしかなく、実質的な節税とは呼べないのではないか、というのが率直な印象でした。

その後、不動産の世界に戻り、築古木造の4年償却を知りました。不動産なら保有中は最高税率で経費計上し、売却時は約20%の譲渡所得税で済む——つまり 税率の差替え によって手元に残るお金が増えます。航空機リースにはこの仕組みがありません。

本記事では、航空機リースの税制改正の歴史と現状を整理し、4年償却との違いを解説します。

航空機リース(オペレーティングリース)とは

航空機リースとは、投資家が組合を通じて航空機を購入し、航空会社にリース(貸付)するスキームです。正式には「日本型オペレーティングリース(JOL)」と呼ばれます。

基本的な仕組みはこうです。

投資家(個人・法人)匿名組合(営業者が組成)航空会社(リース先)出資損失分配・売却益航空機リースリース料✈️航空機を購入・保有リース期間:7〜10年満了時に航空機を売却 → 売却益を分配
  1. 営業者(リース会社)が 匿名組合 を組成
  2. 投資家が匿名組合に出資(数千万円〜)
  3. 組合が航空機を購入し、航空会社にリース
  4. 航空機の 減価償却による損失 が出資者に分配される(航空機の法定耐用年数は5〜10年。耐用年数省令 別表第一「航空機」参照)
  5. リース期間満了時に航空機を売却し、売却益を分配

出資初年度に出資額の70〜80%程度(案件により異なる)、2年目に残りが損金(損失)として計上できるため、短期間で大きな節税効果が得られるとして営業されてきました。これは出資額の2〜4倍の償却資産を取得するレバレッジ構造によるものです。

税制改正の歴史

航空機リースの節税スキームは、税制改正によって段階的に規制されてきた歴史があります。

2005年(平成17年):匿名組合の損益通算制限

最も影響の大きい改正です。

改正前は、匿名組合から分配された損失を給与所得や事業所得と 損益通算 できました。高所得の個人が航空機リースに出資し、本業の所得と相殺して税負担を減らすスキームが広く利用されていました。

2005年の税制改正(租税特別措置法41条の4の2)により、匿名組合契約に基づく損失は他の所得と損益通算できなくなりました 。

この改正で、個人投資家にとっての航空機リースの節税効果は事実上消滅しました。

2020年(令和2年):海外不動産の損益通算制限

航空機リースに直接関係する改正ではありませんが、節税スキーム全体への規制強化の流れとして重要です。

2021年以降、海外不動産(主に米国築古木造)の減価償却費を国内所得と損益通算できなくなりました。詳細は「税制改正の影響」で解説しています。

2025年度税制改正大綱

2025年度の税制改正大綱では、法人向けオペレーティングリースの賃貸借処理は 従来通り継続 されることが示されました。法人が匿名組合に出資した場合の損金算入は引き続き可能です。

ただし、今後の改正で法人向けも制限される可能性はゼロではありません。

個人と法人の決定的な違い

航空機リースの節税効果は、個人と法人で全く異なります。

個人の場合:節税効果なし

匿名組合から分配される損益は 雑所得 として扱われます。雑所得の損失は、給与所得・事業所得など他の所得と損益通算できません。

つまり、年収3,000万円の医師が航空機リースに出資しても、本業の所得税を減らす効果はありません。

任意組合型 であれば損益通算が可能ですが、出資者が 無限責任 を負います(商法第535条)。航空機事故や契約トラブルの際に、出資額を超える損害賠償責任を負う可能性があるため、リスクが極めて高いです。

法人の場合:課税の繰延べ

法人は匿名組合からの損失を損金算入できるため、出資初年度に大きな損金を計上できます。

しかし重要なのは、これは 節税ではなく課税の繰延べ だという点です。リース期間(7〜10年)満了時に航空機が売却されると、売却益が利益として計上されます。その時点で法人税の負担が発生するため、出口で利益をぶつける対策が必要になります。

よく使われる出口対策としては、役員退職金の支給(損金算入で利益を相殺)、大型の設備投資、別のオペレーティングリースへの再出資などがあります。しかし、退職金は支給時期と金額の妥当性が税務調査で問われますし、設備投資は本業で必要なタイミングと一致するとは限りません。リース満了時期は契約時に決まっているため、7〜10年後の経営状況を正確に予測して対策を打つのは容易ではありません。

航空機リースの主なリスク

税制改正以外にも、航空機リースには以下のリスクがあります。

  • 為替リスク:航空機リースはUSD建てが一般的。円高になると円換算での元本割れが起こる
  • 流動性リスク:リース期間(7〜10年)中は中途解約ができない。資金がロックされる
  • 運営者リスク:投資家は航空機の運用に関与できない。リース会社の判断に依存する
  • 残存価値リスク:リース満了時の航空機の売却価格は中古市場の需給次第
  • 航空会社の破綻リスク:COVID-19パンデミックでは多くの航空会社が経営危機に陥り、リース料の支払い遅延や減額交渉が発生した
  • 更なる税制改正リスク:法人向けの損金算入も将来的に制限される可能性がある

4年償却(築古木造アパート)との比較

項目航空機リース(法人)4年償却(築古木造)
損益通算(個人)不可(匿名組合型)給与・事業所得と通算可
損金算入(法人)可能(課税繰延べ)可能(課税繰延べ + 税率差益)
償却期間5〜10年4年
期中の収入原則なし家賃収入あり
為替リスクあり(USD建て)なし
流動性低い(中途解約不可)高い(いつでも売却可能)
コントロール性なし(運営者任せ)高い(売却時期・修繕・家賃を自己判断)
税務安定性規制強化の歴史あり税法の根幹で否認リスク極めて低い
最低投資額数千万〜(現金のみ)数千万〜(融資利用可)

個人の場合、航空機リースでは損益通算ができないため、比較の余地がありません。

法人の場合も、4年償却には 税率差による構造的な利益 (保有中は最大55%で控除、売却時は約20%で課税)があるのに対し、航空機リースは純粋な繰延べに留まります。

他の節税スキームとの比較は「航空機リース・太陽光との比較」で詳しく解説しています。

まとめ

  • 航空機リースは 2005年の税制改正 で個人の損益通算が制限され、個人の節税手段としては機能しなくなった
  • 法人は損金算入が可能だが、あくまで 課税の繰延べ であり、出口対策が必須
  • 為替リスク、流動性リスク、運営者リスクなど、自分でコントロールできないリスク が多い
  • 4年償却は個人でも損益通算可能、コントロール性が高く、税務上の安定性も高い
  • 航空機リースの営業を受けたら「損益通算のルール」を確認し、冷静に判断を

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務上の助言ではありません。税制は法令改正や国税庁の通達等により取扱いが変更される場合があります。具体的な税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

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