税理士に裏切られた経営者が、自力で財務を取り戻すまで
この記事でわかること
Q. 税理士に丸投げするとなぜ危険なのですか?
Q. 税理士なしで確定申告はできますか?
Q. AIで財務管理はどこまでできますか?
20年以上、寄生されていた
最初の税理士との付き合いは20年以上に及んだ。
今から思えば、筆者は洗脳されていたとしか思えない。その税理士は筆者の会社を自分の老後の生活基盤として利用し、会社をいいようにかき回した。しかし当時の筆者にはそれが分からなかった。税務や財務のことは税理士に任せるものだと思い込んでいたからだ。
減価償却を無視した一括計上
この税理士は、サーバー機器の費用(当時は数百万円した)を減価償却せずに一括で経費計上した。
取得価額が10万円を超える資産は、耐用年数に応じて減価償却するのが原則だ。数百万円のサーバーを一括で落とせば、当然ながら税務署の目に留まる。案の定、税務調査が入った。
この税理士は、調査が入ってもごまかせる自信があったのだろう。実際、当初は数百万円の修正を指摘されたが、最終的な修正額は数十万円にまで圧縮した。当時はこの税理士が自慢げに語っていた。
しかし今なら分かる。お前がおかしなことをするから調査が入ったんだろうが、と。
財務を理解していない経営者は、税理士のマッチポンプに気づけない。問題を作り出し、自分で解決して手柄にする。そしてクライアントは「先生のおかげで助かった」と感謝する。この構図に20年以上はまっていた。
粉飾決算でM&Aが白紙になった
リーマンショックと東日本大震災で、会社の財務は大きく傷ついていた。立て直す余力はもう残っていなかった。そして弱った企業には、裏切りが集まる。取引先、関係者——信頼していた相手からいくつもの裏切りに遭った。
そこに、ある企業からM&A(会社買収)の提案が持ちかけられた。M&Aが成立すれば会社は存続できる。従業員の雇用も守れる。筆者にとって最後の望み だった。
しかしM&Aには買い手側によるデューデリジェンス(買収監査)がある。帳簿を精査される。そこで発覚したのが、粉飾決算 だった。
実は、かつて筆者もこの粉飾を知っていた。赤字決算では銀行が融資をしない。だから税理士の判断に従っていた時期がある。
しかしリーマンショックで財務が大きく傷ついたとき、筆者はこの税理士に「もう粉飾はやめてくれ」 と明確に依頼した 。これ以上の粉飾は意味がない。実態どおりの決算に戻してくれ、と。
だから粉飾はもうないと信じていた。
まだ続いていた。
M&Aは白紙に戻った。 最後の望みが、信頼していた税理士の手で潰された。
10年以上前にようやく縁を切ったが、最後の会話は「勘弁してくれ。」だった。
周囲はこの経緯を知らない。だから筆者のことを「あれだけ世話になっておきながら恩知らずだ」と言う人もいる。税理士が長年にわたって何をしてきたかを知らないから、そう見えるのだろう。
2番目の税理士には契約を切られた
リーマンショック後、筆者は新会社を設立し、事業のリソースをそちらに移した。元の会社には細い旧取引だけを残した。事を荒立てずに、最初の税理士と距離を置く目的もあった。
新会社の税務を依頼したのが、2番目の税理士事務所だ。
しかし、この事務所は新人のミスが酷かった。所得税の計算ミスを何度も繰り返し、そのたびに修正申告。「申し訳ございません」という謝罪は毎回あったが、ミスは直らなかった。
最後は事務所の代表が菓子折りを持って訪ねてきた。
「申し訳ないが、顧問契約を辞退させていただきたい。」
税理士側からクライアントを切る。こんなことがあるのかと思った。しかし振り返れば、この事務所にとって筆者は「割に合わない客」だったのだろう。何度もミスをして修正申告を重ね、その対応コストが顧問料を上回っていた。
ミスを繰り返したのは事務所側なのに、切られるのはクライアント。理不尽だが、ビジネスとしてはそういう判断もあるのだろう。
3番目の税理士——得意分野の壁
3番目の税理士には、不正もミスもなかった。人柄にも問題はなかった。
しかし、筆者の会社はパッケージソフトウェアの開発会社だった。ソフトウェアの開発費用は、製品として販売されるまで「仕掛品」や「棚卸資産」として計上する必要がある。この税務処理は製造業や小売業とはまったく異なる。
この税理士は正直だった。「ソフトウェアの在庫は税務上、自分には理解できない」と言った。
悪い人ではない。むしろ誠実だ。しかし、理解できない業種の税務を依頼し続けても、お互いにとって意味がない。結局、コストに見合わないと判断して契約を解除した。
これは税理士が悪いのではない。専門分野の不一致 という、税理士選びの構造的な難しさそのものだ。
税務署に通い、自力で申告した
2人の税理士に裏切られ、契約を切られた筆者には、もう頼れる税理士がいなかった。
しかし確定申告の期限は待ってくれない。税務署に通い、職員に教えてもらいながら、自力で申告書を作成した。
スナック経営で簿記を理解した
実は筆者には、副業でスナックを経営していた時期がある。
スナック経営では自分で帳簿をつける必要がある。売上、仕入、人件費、家賃——すべて自分で記帳した。この経験が簿記の基礎になった。
数字は嘘をつかない。帳簿をつけていれば、売上と経費のバランスが直感的に分かるようになる。そして直感的に分かるからこそ、おかしな数字が紛れ込んでいれば気づけるようになる。
倒産後のサラリーマン時代には、関連会社の税務申告も経験した。これも財務リテラシーの土台になっている。
財務が分からない「経営コンサル」
自力で財務を学んだ後、経営コンサルタントとして活動を始めた。そこで気づいたことがある。
財務が読めない経営コンサルタントは、意外なほど多い。
売上や利益の話はできても、貸借対照表が読めない。キャッシュフローの概念が曖昧。減価償却の仕組みを説明できない。しかしクライアントはコンサルタントを「専門家」だと信じている。
税理士もコンサルタントも、肩書きだけでは信用できない。これが筆者の経験から得た結論だ。
財務をAIとともに自分の手に取り戻す
ここまで読んで「じゃあどうすればいいのか」と思うかもしれない。
筆者の答えは明確だ。財務を丸投げするな。自分で理解しろ。
しかし「経営者に簿記の勉強をしろ」と言いたいわけではない。今はそれを助けてくれるツールがある。
AIは何度でも聞ける先生
決算書をAIに読み込ませて、「中学生にも分かるように解説して」と聞けばいい。AIは嫌な顔をしない。何度聞いても怒らない。「こんなことも分からないのか」と見下すこともない。
- 「この仕訳はどういう意味?」
- 「なぜ売上が増えたのに利益が減っている?」
- 「役員貸付金が多いと何が問題?」
こういう質問を税理士にすると「先生の時間を使うな」という空気になることがある。AIにはその空気がない。
税理士の使い方を変える
AIの登場で、税理士との関係は変わるべきだと考えている。
| 従来 | これから |
|---|---|
| 月次経理を税理士に丸投げ | クラウド会計ソフトで自動化 |
| 数字の意味は税理士に聞く | AIに何度でも質問して理解する |
| 節税提案は税理士任せ | 自分でも制度を調べ、方針を持った上で相談する |
| 申告書は中身を見ない | 必ず自分で確認してから提出する |
税理士を不要にするのではない。税理士の使い方を変える のだ。
月次の経理処理はクラウド会計で効率化する。分からないことはAIに聞いて自分で理解する。その上で、税理士には本質的な判断——節税戦略の設計、税務調査への対応、制度改正への対策——だけを相談する。
これが、税理士との新しい共存の形だ。
それでも、信頼できる税理士はいる
ここまで読むと「税理士は全員ダメだ」という結論に見えるかもしれない。
実際、筆者も一時期は完全な税理士不信に陥った。無理もない。20年寄生され、粉飾決算で再起を絶たれ、次の税理士には契約を切られた。経営コンサルとして関わった先でも、さまざまな税理士の問題を目の当たりにしてきた。
しかし、宅建業を営むようになってから、税理士の人脈と関係性を一から構築し直している。何人もの税理士と実際に会い、交流を重ね、仕事ぶりを見てきた。
その結果、分かったことがある。
本当に信頼できる税理士は、やはりいる。
ただし、それはネットの口コミや紹介だけでは見つからない。実際に会って話し、仕事の姿勢を確かめ、時間をかけて関係を築いて初めて分かるものだ。
筆者が安心して紹介できる税理士にたどり着くまでに、これだけの経験と時間が必要だった。逆に言えば、それだけの手間をかける価値がある存在だということだ。
税理士への丸投げは、絶対にダメ
だからこそ、最後に言い切る。
財務は経営の核心だ。それを丸投げした時点で、経営者としての自律は失われる。
税理士の言うことを鵜呑みにしない。申告書の数字を自分で確認する。分からなければAIに聞く。その上で、信頼できる税理士と 対等な関係 を築く。
信頼は、丸投げからは生まれない。自分で財務を理解しているからこそ、税理士の仕事を正しく評価できる。正しく評価できるからこそ、本当に信頼できる相手を見極められる。
財務を自分の手に取り戻すことが、経営者にとって最大の防御策であり、最大の武器になる。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務上の助言ではありません。税制は法令改正や国税庁の通達等により取扱いが変更される場合があります。具体的な税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。


