筆者が見てきた税理士の実態|不正還付・偽税理士・800万円の泣き寝入り
この記事でわかること
Q. 税理士が故意に間違った申告をすることはあるのですか?
Q. 偽税理士とは何ですか?
Q. 税理士のミスで損害を受けた場合、弁済を求められますか?
筆者自身の税理士との体験は別の記事に書いた。ここでは経営コンサルタントとして、あるいは知人を通じて遭遇した事例を紹介する。
筆者だけが不運だったのではない。これは構造的に起きている問題だ。
能力とモラルの問題
財務資料のPDFがスキャン画像だった
ある年配の税理士から受け取った財務資料のPDFを開くと、印刷した紙をスキャナーで読み取ったもの だった。
会計ソフトからデータを直接出力すれば、検索可能なテキストPDFになる。わざわざ印刷してスキャンするということは、デジタルデータの扱いに慣れていないか、元のデータを見せたくないか、どちらかだ。
クライアントは「お爺ちゃん税理士なので…」と苦笑いしていた。2020年代になっても元帳を印刷物で管理している事務所が存在する。これ自体は不正ではないが、仕事の精度を推し量る兆候 だ。
安価な顧客を「客」と見ていない
顧問料が安いクライアントに対して、露骨に対応が悪くなる税理士もいる。
たとえば資料の請求。台帳や決算書など、税理士が預かっているものを返してもらうだけなのに、1週間待たされる。作成が必要な書類ならまだ理解できる。しかし手元にあるものを渡すだけ で1週間かかるのは、単に後回しにされているだけだ。
顧問料の高いクライアントには即日対応するのに、安いクライアントは放置する。これは優先順位の問題ではない。安価な顧客をそもそも「客」として見ていない のだ。
優遇税制を「面倒くさい」と拒否
あるクライアントが税理士に優遇税制の適用を相談したところ、返ってきた答えは「よく分からない」「面倒くさい」だった。
税理士はクライアントの利益を最大化するために存在する。優遇税制の適用は、そのための基本的な業務だ。それを「面倒くさい」の一言で片づける税理士に、顧問料を払う意味があるのか。
税理士のミスで800万円——泣き寝入り
知人の会社で、税理士のミスにより800万円もの税金を余分に払ったケースがあった。
詳しい経緯は省くが、明らかに税理士のケアレスミスだった。知人はこう言った。
「弁済しろと言いたいけど、田舎なので、それをやるといろいろと支障が出るから、あきらめた。」
地方の中小企業にとって、税理士との関係は地域コミュニティの一部だ。取引先、金融機関、商工会——すべてが繋がっている。税理士と揉めれば、その影響は税務だけに留まらない。
だから800万円を飲み込んだ。
税理士賠償責任保険という制度はある。しかし、そもそも請求できる関係性がなければ保険の存在は意味がない。地方の中小企業が抱える構造的な問題だ。
売上を全額「役員貸付金」で処理した税理士
法人を設立したばかりの知人が、法人口座の開設が間に合わず、一時的に個人口座で売上を受け取っていた。よくある話だ。
ところがこの税理士は、個人口座に入った売上の全額を「役員貸付金」 として処理 した。
役員貸付金が多額に計上された決算書は、銀行から見れば「経営者が会社の金を私的に流用している」ようにしか見えない。融資を申し込める状態ではなくなった。
知人から相談を受け、筆者は「税務署に直接聞いてみろ」と助言した。税務署の回答はこうだった。
「法人口座がない期間に個人口座で受けた入金を、役員貸付金にするのはおかしい。」
この回答を税理士に伝えたところ、こう逆ギレされた。
「それなら売上の借方は何になるんだ? 個人口座なんだから粉飾決算だ!」
法人口座がない期間の個人口座入金は、普通預金(法人)への振替や仮受金など、適切な処理方法がいくらでもある。「粉飾決算だ」と叫ぶのは、自分の処理の誤りを認めたくないだけ だ。
免税事業者に消費税の還付請求をした国税OB
これは国税OB(元税務署職員)を名乗る税理士が引き起こしたケースだ。
知人の会社は消費税の 免税事業者 だった。翌期から課税事業者になる予定ではあったが、その時点ではまだ免税事業者だった。
にもかかわらず、この税理士は「税務署にはバレない」と言って、消費税の還付請求 を行った。
免税事業者が消費税の還付を受けることは制度上あり得ない。当然、税務調査が入った。
そして調査が入ると分かった途端、この税理士は連絡が取れなくなった。逃げたのだ。
国税OBだから税務に詳しい、元税務署だから信頼できる——そう思って依頼した結果がこれだ。肩書きは信頼の保証にはならない。
そもそも税理士ではない人間がいる
最も衝撃的だったのは、偽税理士 の存在だ。
コンサルをしていたクライアントから相談があった。税務申告を依頼していた人物に決算書を求めようとしたところ、電話は着信拒否、LINEもブロックされ、居所も分からず連絡が取れない という。
怪しいと感じ、日本税理士会連合会の税理士検索システムでその人物の名前を調べた。
該当者がいなかった。
税理士資格を持たない人間が、税理士を名乗って税務代理を行い、そして逃げた。
偽税理士は犯罪
税理士法第52条は、税理士資格を持たない者が税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことを禁止している。違反した場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金 だ。
偽税理士が作成した申告書には、当然ながら税理士の署名・押印がない。しかし、クライアントがそこまで確認していなければ気づけない。
自分の身を守るために
これらは筆者が実際に遭遇した事例だ。特殊な業界の話ではない。中小企業や個人事業主の世界で、普通に起きている。
最低限やるべきこと
- 申告書の控えを必ず受け取り、数字を確認する — 売上・経費・資産が自分の認識と合っているか
- 税理士の署名・押印があるか確認する — なければ偽税理士の可能性がある
- 税理士検索システムで資格を確認する — たった1分で判別できる
- 違和感があればセカンドオピニオンを取る — 1回限りの相談なら1〜3万円程度
丸投げをやめる
これらの事例に共通するのは、クライアントが財務を税理士に丸投げしていた ことだ。
丸投げしていなければ、架空の処理に気づける。おかしな還付請求に疑問を持てる。役員貸付金の意味が分かれば「それはおかしい」と言える。
財務を自分で理解することが、最大の防御策だ。筆者自身がそれを身をもって学んだ経緯はこちらの記事に書いた。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務上の助言ではありません。税制は法令改正や国税庁の通達等により取扱いが変更される場合があります。具体的な税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。


