不動産投資の利益相反を疑う|業界の常識もネットの防衛策も本当に正しいか
この記事でわかること
Q. 両手仲介は利益相反ですか?
Q. 両手仲介と片手仲介の違いは何ですか?
Q. 不動産投資でセカンドオピニオンは有効ですか?
Q. 不動産テックツールで相場は正確にわかりますか?
Q. 不動産投資の利益相反を避けるにはどうすればいいですか?
Q. 信頼できる不動産会社はどうやって見つけますか?
押し売り営業って、うれしいですか?
突然電話がかかってきて「節税になる物件があります」と言われる。断っても翌週にまた電話が来る。——こんな営業を受けて「この会社に資産を任せたい」と思う人がいるだろうか。
当社は、こうした営業をしない。理由は単純で、自分がされて嫌だからだ。
筆者のバックグラウンドはシステム開発で、いわゆる営業畑の出身ではない。数字を作るために押して売る、必要のないものでも買わせる——そういう古典的な営業が長く業界の手本とされてきたが、正直なところ、自分にはできなかった。長い間それをコンプレックスに感じていた。
しかし最近、考えが変わってきた。必要な人に必要なサービスを提供して、長い付き合いの中で取引が生まれる。それでいいのではないか。むしろ、それしかないのではないか。
この記事では、不動産投資でよく語られる「利益相反」の常識を疑ってみたい。業界の内側にいる人間が当たり前だと思っていることも、ネットに書いてある防衛策も、果たして本当に正しいのか。
まず知っておきたい——「両手」と「片手」とは
不動産の売買では、売主側と買主側にそれぞれ仲介業者がつく。
- 片手仲介:売主側・買主側に別々の業者がつき、それぞれの依頼人から手数料を受け取る
- 両手仲介:1社が売主・買主の両方を仲介し、双方から手数料(各3%+6万円)を受け取る
両手なら1件で手数料が倍になる。だから「業者が自分の利益を優先するのでは」と批判されやすい。しかし、話はそう単純ではない。
「両手仲介=利益相反」は本当か?
両手にはメリットがある。 双方の意思疎通が速い。売主と買主の思いを一人の仲介者が直接受け止められる。地上げのような難しい交渉では、双方の事情を理解している一社が間に入るほうが、話がまとまりやすい。
片手なら安心かといえば、そうでもない。 片手であっても、それぞれの業者には思惑がある。それが必ずしも依頼人の利益と一致するとは限らない。片手の場合、相手方の事情が見えないまま一方的な要求をぶつけるだけの交渉になりがちだ。
本質は仲介形態ではなく、業者の質だ。 悪質な業者なら、片手でも両手でもいい取引にはならない。取引の結果を左右するのは「両手か片手か」ではなく、その業者がどういう思想で仕事をしているかだ。
ネットでよく見る「防衛策」にも疑問がある
ネット上では、利益相反から身を守るアドバイスがよく並んでいる。どれも理屈としては正しい。しかし、現場から見ると、こういう疑問も浮かぶ。
「セカンドオピニオンを取れ」 ——もっともな話だ。ただ、不動産に詳しく、かつ利害関係のない第三者をどうやって見つけるか。人間である以上、誰にだって何かしらの立場はある。完全に中立な助言者という存在は、思ったより少ない。
「複数社を比較しろ」 ——比較すること自体は悪くない。ただ、似たような営業手法の業者を3社並べても、本質的な違いが見えるとは限らない。何を基準に比較するかのほうが難しい。
「不動産テックツールで相場を把握しろ」 ——便利なツールは増えている。しかし、ツールが示す「相場」は過去の取引データに基づく参考値だ。一件の異常な高値取引がデータに入れば、それが基準になる。そもそも相場は常に変動しており、買主のモチベーション次第で相場を超える価格でも成立する。「相場は固定されたもの」という前提で判断すると、かえって見誤ることもある。
「レインズで囲い込みをチェックしろ」 ——2025年の制度改正でQRコード確認が可能になった。ただ、レインズ自体は宅建業者向けのシステムだ。一般の方がどこまで活用できるかは、正直なところ未知数だと思う。
「投資家同士のネットワークを作れ」 ——理想的ではある。ただ、多忙な方にとって、そのネットワーク構築に割く時間自体がないケースも多い。
どの防衛策にも一理はある。しかし「理屈としては正しいが、実行のハードルが高い」ものが多いのも事実だ。
結局、信頼できる人を自分の周りに持てるかどうか
防衛策を並べたところで、取引のたびに業界のプロと渡り合うのは、誰にとっても大変だ。
では、どうするか。
筆者が考えるのは、自分の人間関係の中で、不動産のことを相談できる相手を持っておくこと だ。同級生、同僚、知人、地元のつながり——どんな形でもいい。取引したいときだけ慌てて業者を探すのではなく、日頃から「ちょっと聞ける相手」がいるかどうか。それが、いちばん現実的な備えだと思う。
もちろん当社でもご相談は歓迎するが、全国対応しているわけではないし、すべてのご相談に応えられるとも限らない。大事なのは、当社かどうかに関係なく、あなた自身の生活圏や人間関係の中で信頼できる相談先を持つこと だ。
4年償却物件の取得でも同じことが言える。建物比率の妥当性、償却効果の検証、出口戦略——これらは一回調べて終わりではなく、長い付き合いの中で継続的に相談できる相手がいてこそ判断できる。
まとめ
「両手仲介は悪」「セカンドオピニオンを取れ」「複数社を比較しろ」——よく聞く話だが、実際にはどれも万能ではない。
利益相反から身を守る方法は、テクニックではない。信頼できる相談先と長い関係を築くことだ。取引のときだけ都合よく現れる相手ではなく、普段から自分の状況を知ってくれている人と組む。地味だが、これがいちばん確実だと考えている。
不動産業界の具体的な利益相反の仕組み(サブリース、囲い込み、情報の非対称性など)については、別の記事で詳しく解説する予定だ。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の税務上の助言ではありません。税制は法令改正や国税庁の通達等により取扱いが変更される場合があります。具体的な税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。


