法人戦略 公開: 2025.01.15
法人での利益留保|内部留保の活用方法
内部留保とは
内部留保とは、法人の利益から税金を支払った後に、法人内に蓄積される資金のことです。
役員報酬や配当として外部に流出させず、法人の資産として保持することを「利益を留保する」といいます。
利益留保のメリット
1. 税率のメリット
法人税率は最大約34%であるのに対し、個人の所得税・住民税は最大55%です。
| 所得金額 | 個人税率 | 法人実効税率 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 30% | 22% | ▲8% |
| 800万円 | 33% | 24% | ▲9% |
| 1,500万円 | 43% | 34% | ▲9% |
| 3,000万円 | 50% | 34% | ▲16% |
高所得になるほど、法人に利益を残す方が税負担が軽くなります。
2. 将来の投資資金
内部留保は、将来の物件購入や事業拡大の資金として活用できます。
| 活用方法 |
|---|
| 2棟目以降の物件購入資金 |
| 大規模修繕の準備金 |
| 新規事業への投資 |
| M&Aや事業買収 |
3. 金融機関からの信用
内部留保が厚い法人は、財務体質が良いと評価され、融資を受けやすくなります。
| 評価項目 | 内部留保の影響 |
|---|---|
| 自己資本比率 | 上昇(好評価) |
| 返済能力 | 向上 |
| 信用格付け | 上昇 |
4. リスクへの備え
不測の事態(空室増加、大規模修繕、災害など)に対する備えになります。
利益留保のデメリット
1. 法人税がかかる
内部留保する利益には法人税等が課税されます。
利益1,000万円の場合
→ 法人税等:約340万円
→ 内部留保:約660万円
2. 個人で使えない
法人に留保した資金は、そのままでは個人の生活費や消費に使えません。
3. 機会損失
法人に資金を寝かせておくより、個人で投資運用した方が有利な場合もあります。
4. 相続時の課題
内部留保が多いと法人の株式評価額が上がり、相続税負担が増える可能性があります。
留保vs還元の判断基準
法人に留保すべきケース
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 個人の所得税率が高い(43%以上) | 法人税率の方が低い |
| 近い将来に物件購入予定 | 投資資金として活用 |
| 大規模修繕が控えている | 修繕資金として準備 |
| 融資を受ける予定 | 信用力向上のため |
個人に還元すべきケース
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 個人の所得税率が低い | 個人で受け取った方が税負担軽い |
| 当面大きな支出予定がない | 法人に資金を寝かせる意味が薄い |
| 生活資金が必要 | 個人で使える資金確保 |
| 相続対策を重視 | 株式評価額を抑える |
内部留保の活用方法
1. 次の物件購入の頭金
内部留保を自己資金として、2棟目以降の物件購入に活用。
2. 修繕積立
計画的に修繕費用を積み立て、大規模修繕に備える。
3. 保険の活用
逓増定期保険などで資金を運用しながら、退職金の準備も行う。
4. 役員退職金の原資
役員退職金は損金算入できるため、出口として有効。
役員退職時に退職金を支給
→ 法人の損金(経費)になる
→ 退職金は退職所得として有利な税制が適用
シミュレーション例
前提条件
- 法人利益:1,500万円
- 代表者の他の所得:なし
パターン1:全額留保
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 法人利益 | 1,500万円 |
| 法人税等(34%) | ▲510万円 |
| 内部留保 | 990万円 |
| 個人の手取り | 0円 |
パターン2:役員報酬700万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬 | 700万円 |
| 法人利益 | 800万円 |
| 法人税等(24%) | ▲192万円 |
| 内部留保 | 608万円 |
| 個人所得税・住民税 | ▲100万円 |
| 社会保険料(本人) | ▲100万円 |
| 個人の手取り | 500万円 |
| 税金合計 | 292万円 |
パターン3:役員報酬1,200万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬 | 1,200万円 |
| 法人利益 | 300万円 |
| 法人税等(22%) | ▲66万円 |
| 内部留保 | 234万円 |
| 個人所得税・住民税 | ▲240万円 |
| 社会保険料(本人) | ▲130万円 |
| 個人の手取り | 830万円 |
| 税金合計 | 306万円 |
→ 税金だけ見ればパターン2が最も有利
まとめ
- 内部留保とは、法人税を払った後に法人に残す利益のこと
- 法人税率(最大34%)が個人所得税率(最大55%)より低い場合に有利
- 将来の投資資金、修繕準備金、融資の信用力向上に活用可能
- 役員報酬とのバランスを考え、税金+社会保険の総合負担で判断
- 最適なバランスは状況によって異なるため、毎年見直しを
内部留保と役員報酬のバランスは、法人の状況や個人のライフプランによって最適解が変わります。税理士と相談しながら、毎年の方針を決めましょう。


