繰越欠損金の活用法|赤字を将来に活かす
繰越欠損金とは
繰越欠損金とは、法人が赤字(欠損金)を出した場合に、その赤字を翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度です。
これにより、将来の法人税を減らすことができます。
繰越欠損金の基本ルール
繰越期間
| 区分 | 繰越期間 |
|---|---|
| 法人 | 10年間 |
| 個人(青色申告) | 3年間 |
法人は個人の3倍以上長く繰り越せるため、長期的な節税計画が立てやすくなります。
控除限度額
| 法人区分 | 控除限度 |
|---|---|
| 中小法人(資本金1億円以下) | 所得の100% |
| 大法人(資本金1億円超) | 所得の50% |
中小法人は繰越欠損金の全額を控除できます。
適用要件
- 青色申告であること
- 欠損金が生じた事業年度から連続して確定申告書を提出していること
- 帳簿書類を保存していること
4年償却投資での活用
4年償却と繰越欠損金の関係
4年償却投資では、物件購入後の1〜4年目は減価償却費により大きな赤字が発生することがあります。
この赤字を繰越欠損金として活用することで、5年目以降の黒字と相殺できます。
シミュレーション例
前提条件
- 物件価格:8,000万円(建物4,000万円、土地4,000万円)
- 年間家賃収入:800万円
- 経費(償却費除く):200万円
- 減価償却費:年間1,000万円(4年間)
| 年度 | 家賃収入 | 経費 | 減価償却 | 所得 | 繰越欠損金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 800万円 | 200万円 | 1,000万円 | ▲400万円 | 400万円 |
| 2年目 | 800万円 | 200万円 | 1,000万円 | ▲400万円 | 800万円 |
| 3年目 | 800万円 | 200万円 | 1,000万円 | ▲400万円 | 1,200万円 |
| 4年目 | 800万円 | 200万円 | 1,000万円 | ▲400万円 | 1,600万円 |
| 5年目 | 800万円 | 200万円 | 0円 | 600万円 | 1,000万円 |
| 6年目 | 800万円 | 200万円 | 0円 | 600万円 | 400万円 |
| 7年目 | 800万円 | 200万円 | 0円 | 600万円 | 0円 |
5年目以降の黒字を繰越欠損金で相殺し、約3年間は法人税がかかりません。
繰越欠損金の戦略的活用
戦略1:売却時の利益と相殺
物件を売却して譲渡益が出た場合も、繰越欠損金と相殺できます。
売却益 2,000万円 − 繰越欠損金 1,600万円 = 課税所得 400万円
→ 法人税を大幅に削減
戦略2:新規物件の黒字と相殺
1棟目の繰越欠損金を、2棟目以降の物件から生じる黒字と相殺することも可能です。
戦略3:役員報酬との調整
繰越欠損金がある期間は、役員報酬を高めに設定して個人で節税。欠損金がなくなったら、役員報酬を調整して法人に利益を残す。
注意点
1. 青色申告の取り消しに注意
帳簿の不備や申告漏れがあると、青色申告が取り消される可能性があります。取り消されると繰越欠損金が使えなくなります。
2. 連続した申告が必要
赤字の事業年度から連続して確定申告書を提出していないと、繰越欠損金が使えません。
3. 合併・組織再編時の制限
合併や組織再編を行う場合、繰越欠損金の引継ぎに制限があります。
4. 欠損金の期限管理
10年を超えると繰越欠損金は消滅します。期限切れ前に活用計画を立てましょう。
個人との比較
| 項目 | 法人 | 個人(青色) |
|---|---|---|
| 繰越期間 | 10年 | 3年 |
| 控除限度 | 所得の100%(中小法人) | 所得の100% |
| 繰戻還付 | 可能 | 原則不可 |
法人の方が繰越期間が長いため、4年償却投資には有利です。
繰戻還付制度
繰越欠損金とは逆に、当期の赤字を前年の黒字と相殺して、前年に支払った法人税の還付を受ける制度もあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象法人 | 中小法人のみ |
| 対象期間 | 前1年間 |
| 手続き | 欠損金の繰戻しによる還付請求書の提出 |
まとめ
- 繰越欠損金は法人の赤字を10年間繰り越せる制度
- 青色申告と連続した確定申告が要件
- 4年償却投資では、1〜4年目の赤字を5年目以降の黒字と相殺
- 売却益との相殺も可能で、出口戦略に活用できる
- 個人の繰越期間(3年)より長いため、法人化のメリットの一つ
繰越欠損金を戦略的に活用することで、長期的な節税効果を最大化できます。事業計画と合わせて、欠損金の活用計画を立てましょう。


