出口戦略・売却 公開: 2025.01.15
買換え特例の活用法|売却益の課税繰延べ
買換え特例とは
買換え特例とは、事業用資産を売却して新たな事業用資産を購入した場合に、売却益の課税を将来に繰り延べられる制度です。
正式名称は「特定事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」といいます。
買換え特例の仕組み
課税の繰延べ
買換え特例は、課税の「免除」ではなく「繰延べ」です。
売却時:課税を繰り延べ
↓
買換え資産を保有
↓
買換え資産を売却時:繰り延べた税金+新たな税金を支払い
繰延べ割合
売却益の**80%**が繰延べの対象となります(残り20%は課税)。
特定事業用資産の買換え特例
主な適用パターン
| パターン | 内容 |
|---|---|
| 10年超所有の土地等→国内の土地等 | 長期保有資産の買換え |
| 既成市街地等→それ以外の地域 | 都心から郊外への買換え |
| 航空機騒音障害区域→それ以外 | 特定地域からの移転 |
適用要件(長期所有の買換え)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡資産 | 国内の土地等・建物等(10年超所有) |
| 買換資産 | 国内の土地等・建物等(事業用) |
| 買換期間 | 売却年、前年、翌年のいずれか |
| 買換資産の使用 | 取得後1年以内に事業用として使用 |
事業用の定義
「事業用」とは、以下のような用途です。
| 事業用に該当 | 事業用に該当しない |
|---|---|
| 賃貸業(不動産所得) | 自己居住用 |
| 事業所・店舗 | 別荘・セカンドハウス |
| 駐車場業 | 生活用資産 |
住宅の賃貸業も「事業用」に該当するため、投資用不動産でも適用の可能性があります。
計算方法
基本的な計算
売却価格 ≦ 買換資産の取得価額の場合
課税される譲渡所得 = 譲渡益 × 20%
繰り延べられる金額 = 譲渡益 × 80%
売却価格 > 買換資産の取得価額の場合
売却価格と買換価格の差額分は、繰延べの対象外となります。
シミュレーション例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 5,000万円 |
| 取得費 | 2,000万円 |
| 譲渡費用 | 200万円 |
| 譲渡益 | 2,800万円 |
買換え特例なしの場合
税額 = 2,800万円 × 20.315% = 約569万円
買換え特例ありの場合(買換資産5,000万円以上)
課税される譲渡益 = 2,800万円 × 20% = 560万円
税額 = 560万円 × 20.315% = 約114万円
繰延べ税額 = 569万円 − 114万円 = 約455万円
買換え特例のメリット・デメリット
メリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 資金効率の向上 | 税金を払わずに次の投資に資金を回せる |
| キャッシュフローの改善 | 売却時の支出を抑えられる |
| 資産の入れ替え | より良い物件への買換えがしやすい |
デメリット
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 課税の免除ではない | いずれ税金を払う必要がある |
| 買換資産の取得費が下がる | 次の売却時に税負担が増える |
| 適用要件が厳しい | 条件を満たさないと適用不可 |
投資用不動産での活用
活用しやすいケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 10年超保有の物件 | 長期所有の買換え特例が適用可能 |
| 法人での投資 | 要件を満たしやすい |
| 事務所・店舗 | 事業用資産に明確に該当 |
活用しにくいケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 5年程度で売却 | 10年超の要件を満たさない |
| 個人での住宅賃貸 | 実務上、適用が難しいことも |
| 買換資産の予定がない | 買換えが条件 |
申告手続き
必要書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 確定申告書 | 買換え特例の適用を記載 |
| 譲渡所得の内訳書 | 売却した資産の詳細 |
| 買換資産の取得を証する書類 | 売買契約書等 |
| 買換資産の事業供用証明 | 賃貸借契約書等 |
買換資産が翌年取得の場合
売却年の確定申告で「買換資産の取得予定」を届け出ます。翌年に取得できなかった場合は、修正申告が必要です。
まとめ
- 買換え特例は売却益の課税を将来に繰り延べる制度
- 売却益の80%が繰延べ対象(20%は課税)
- 10年超保有の事業用資産の買換えが主な適用パターン
- 投資用不動産でも適用可能だが、要件は厳しい
- 課税の「免除」ではなく「繰延べ」である点に注意
- 適用の可否は税理士に相談して判断
買換え特例は、不動産投資の規模拡大や資産入れ替えに有効な制度です。適用要件を理解し、計画的に活用しましょう。


